寒くて寒くて、震える

俺が物心ついたころ、ガンダムは一度終わっていた。
富野由悠季監督は、次のステージへと進んでいたのである。
初めて見たロボットアニメは、ダンバインザブングルだった。
エルガイムは青森では放送していなかったと記憶している。
日曜の昼にマクロスをリアルタイムで見て、俺は育った。
そう、1stガンダムが日本で初めて打ち切りになった青森で。


俺にとって、ガンプラは大きく分けて二種類あったのを覚えてる。
一つは「500円で買えるもの」で、もう一つは「500円以上するもの」だ。
小学校低学年の俺には、500円以上のお金を持つ機会が殆どなかった。
お小遣いを貯めることより、ガチャガチャやお菓子に使ってしまった。
当時は一つ30円だったビックリマンチョコ、これを買えば文無しである。
それでも、小さな俺が最大限の忍耐を発揮できる、それが500円の貯金。
だが、500円ではなかなか欲しいガンプラが買えなかったのである(笑)
Zガンダムの放送が始まった小学校三年生の時、小さなガンプラが300円。
スナップキットなのも手伝って、まずは300円シリーズを買い始めた。
アッシマーメッサーラは400円、まだ買えた…アッシマー、変形ナシだ。
1/144のガンダムMK2がピッタリ500円、俺が買えたのはここまでだった。
いつもミニ四駆を走らせてる工藤模型店では、沢山のガンプラがあった。
1/100のでっかいZガンダムは、どうやら変形するらしい、すげーなー!
そういう時代に、とても気になるガンプラが一つ、あったのである。


Zガンダムが人生のマイ1stガンダムだったため、あとから1stを見た。
TV版の1stガンダムの再放送を見ながら、なんかコレジャナイ感があった。
当時見てたZガンダムは、話はわからないけどMSが抜群に格好良かった。
変形するMS、そして途中のZガンダムへの乗り換えイベントに興奮した。
対して、まるで別物に見えた1stは、話もよくわからない上に野暮ったい。
MSの格好良さでは、当時の自分はZが好きだった…たった一機を除いて。
そう、MSVという「テレビに出てこないMS」の世界に、魅了されたのだ。
ザクマインレイヤー、フルアーマーガンダムガンキャノン2など…
ガンプラのボックスアートでしか会えないMSに、熱中したのだ。
だが、買えない…そう、割とMSVのガンプラはお高いのだ、俺には。
そんな中で、ついぞ買えなかった最高のお気に入りが、これである。



ハイ、ドーン!前置き長っ!今日はRGシン・マツナガ専用高機動型ザク
俺の時代は、これを「ザク2」と呼んでました…大きく分けて、三種類!
ジョニー・ライデン黒い三連星、そしてシン・マツナガの専用機だ!
因みに今のザク2が、ただの「ザク」、ザク1は「旧ザク」だったのだ。
俺はこの、白一色に塗られた高機動型のチューンド・ザクに憧れた。
ジョニー・ライデンも好きだが、赤はやっぱりシャアだと俺は思った。
そして、対をなすかのような白狼シン・マツナガのザクが格好いいのだ。
テレビで見たザクは、なんか弱いし、もっさりしてて好きじゃなかった。
だが、この高機動型ザク、いわゆる06Rにはしびれる格好良さがあった。
選ばれたエースだけの、特別にチューンされた空間戦闘用の高性能機。
ゲルググリックドムもあるが、俺はザクが、06Rがずっと好きなのだ。



さて、今回はプレミアム・バンダイで発売のシン・マツナガ専用機。
非常にスタイリングがよく、完成してみたらなかなかいい感じですね。
組み立ててる時は「あれ?脚が短い?」って思ったけど、気にならない。
適度にずっしり、貫禄もあって、それでいてシャープなバランスです。
実はお気に入りのMSなので、以前HGUCのキットも組んだことがありました。
今回のRG版は、その頃に少し不満だった点が、幾つか改善されてます。



まず、HGUCだとジョニー・ライデン機にしかつかない、ジャイアントバズ!
RGの説明書では「試作型ザクバズーカ」となってて、形状が少し違います。
もちろん、通常のザクバズーカもついてきます、これが凄くいいんですよ。
ジャイアントバズ、シン・マツナガ機にも欲しいとずっと思ってました。
特徴的な脚部やバックパックの情報密度も、HGUCよりより濃密に感じます。
ただ、難点を言えば…一箇所だけ、素人お断りな激ムズの組み立てがある。
それが「特徴的なザクの動力パイプ」なんです…ここ、とっても難しい。
HGUCだと、軟質プラだったりするんですが、RGは流石に格が違った(笑)
バネやワイヤー状のパーツに、節の部分を一個一個通してパイプにする!
これが難しい、しかもパイプの箇所によって節の部分の大きさが違う!
…疲れました、ながやんはぶきっちょなので、細かい仕事苦手です。
しかも、苦労した割に「普通のパーツの方が格好良く仕上がりそう」と…
まあ、RGなんでディティールにこだわってるのかな、とは思います。



あとは、HGUCからずっとシン・マツナガ機の難点、最大の難関がこれ!
左肩のスパイクアーマーに、ブルーのラインのデカールを貼る作業です。
スパイクアーマーは、基本的に球形、曲面で構成された装甲なんですね。
そこに、平面の真っ直ぐなデカールを貼ると…どうなると思います?
そう、シワが寄る!当たり前です、球状の曲面だから、平面じゃないから!
しかもねー、このデカールは綺麗に貼っても…端っこから剥がれてくる。
HGUCでもそうだけど、RGでもやっぱり上手に貼れない、剥がれてきちゃう。
切れ目を入れてみる等、今回は工夫をしてみましたが、駄目でしたね。



ただ、非常に満足度が高いキットで、久々につや消し仕上げしましたね。
シン・マツナガ、格好いいから好きなんですよ…俺の憧れのエースです。
小さい頃は「シン・マツナガさんって、どんな人だろ」ってワクワクした…
髭面のおっさんかよ!って思ったけど、最近歳をとったらそれが好きだ。
まあ、あの顔で二十代って設定は…でも、ランバ・ラルの件もあるしね。
シン・マツナガは、忠臣なんですよ…そして、生死不明なんですよね。
俺はだから、思うんです…ドズルの懐刀だった、エースのシン・マツナガ
彼を主人公とした物語は、アクシズへミネバ様とその母を逃して終わる。
ミネバ様が逃げおおせるよう、シン・マツナガは殿となって、散った…
でも、俺はシン・マツナガが生きてても、面白いなと思うんですよね。
年食ってベテランになって、白いギラ・ドーガやザク3に乗るの、どう?
かっこええやん…俺はそういうIFを想像するの、なんとなく好きだな。