歴史を求め神話へ達する

俺はね、プロの創作家だから勿論「これはいい」「これは駄目」思うよ?
仕事の時は客観的に、何が売れるか何が受けるかを分別する作業がある。
でも、俺は好きなものを見るのに文句言いたくて金払ってる訳じゃない。
大好きなものに対しては、少し盲目的なくらいでちょうどいい…俺はね。
だからね、俺はゴティックメードのデキに客観性を失っててもいいのだ。
悪いとこ探しは他に任せる、俺は感動して泣いてしまった、いい映画だ。
あ、ネタバレがあるので避けたい人は気をつけてくださいましぇり!


GTMはFSSの前日談だったんだよー!な、なんだってぇーっ!
トリハロンは後のフィルモア初代皇帝です、ペリンはアトールの巫女です。
うん、そういう事実を言っても「あ、やっぱり」で終わるだろうさ。
でも、一番素晴らしいのは作中のフィルムでそれが関係がないこと。
物語は終始、FSSと全く関係がないGTM独力で進行し、閉じられる。
勿論、ヘッドライナーとかナイトマスターの紋章とか出てくるよ?
それでもGTMは、トリハロンとペリンが交互に引っ張る物語だった。
公開前からFSSとの関連は確定的に明らかだったし、予定調和だった。
GTMの凄いとこは、それをGTMが終わった最後のエンディングで見せたこと。


作中、トリハロンはペリンを守って戦い、真実に打ちひしがれる。
ペリンを守ってる自分が実は、一番ペリンを危機にさらしていたのだ。
なぜならテロはペリンではなく、トリハロンを狙っていたのだった!
落ち込むトリハロンにペリンは、身に宿る歴代詩女と共に伝える。
皇帝となって世界を変えて欲しい、争いを減らす国を作って欲しいと。
それが後の軍事大国フィルモア帝国を生み出すことになったのだ。
でね、俺がどこで泣いたかっていうと、そのやり取りの直後なんだ。
ペリンがカーマインプラネットと同じ色、緋色の織物をプレゼントする。
最初見た時「あれ、ええとどこかで…」って思って、首を捻った。
だが、それを受け取ったトリハロンが未来に歩き出した瞬間…理解!
そう、トリハロンがペリンのくれた布をマントのように羽織ったのだ!
それは実は、FSSの時代にはボロボロになって、でも大事にされてる衣。
歴代フィルモア皇帝が大一番で纏う、あのダイ・グの戦衣だったんだ!
誰よりも先陣に立つフィルモア皇帝を包むのは、ハスハの巫女の布だった…
初代皇帝が心を通わせた少女との絆だから、歴代皇帝は大事に着たんだ。
ああ、あれだ…色あせてボロ布同然なのに、ダイ・グが着てたあれだよ!
これがわかった時の衝撃で、ついつい俺は涙してしまったのだわ。


あとはやっぱり、作中のペリンとトリハロンの表情の豊かさが凄い。
記号化しきれない人間味を持ったキャラって、今時貴重だと思うのだ。
互いの呼び名、呼び方にさえ気持ちが篭ってて、故に互いにこだわる。
こだわるから反発しあう、でもドラマの基本は価値観の対立だから。
そうして衝突を繰り返す少年と少女は、いつしか惹かれ合ってゆく…
消して交わることのない運命を一時重ねて、二人は一人と一人になる。
短い時間の映画だったけど、とっても素晴らしい物語だと思ったな。
永野先生の言う「脚本主導の物語」がちゃんとできてたように感じた。
これを八年間待った、俺の我慢というかもどかしかった日々が報われた。
それだけでもう、俺は嬉しくて興奮してしまったんだよなあ…満足!