世代を超えて受け継がれるモノ

俺はガンダムで育った世代で、ガンダムが好きなガノタだ。
ガンダムのオタク、ガンダムオタク、ガンオタ、gunota…ガノタね。
だから「よせばいいのに」と周囲の人が思っても、気遣ってくれても。
絶対にガンダムAGEの最終回というイベントからは逃げてはいけない。
勿論、自分の立場もあるし、慎重にならざるをえないけども。
この一年間追いかけてきたガンダムの結末に言葉を添えたい。


ガンダムというのは一つの作品群を指し、同時にジャンルをも意味する。
ロボットアニメの中でガンダムだけが、一つのブランドとして確立してる。
それは1stからZ、ZZと続く宇宙世紀物、そしてGから始まるアナザー物…
常にガンダムに携わってきた、多くのクリエイター達の努力の賜物だ。
ガンダムが商業的価値が高い作品なのも、子供向けにとどまらぬ魅力も全て。
全て、先達が心血を注いで身を削ってきた、その努力の上に成り立っている。
そして思うのだ…誰もが皆、「よかれ」と思ってガンダムを作っている。
例えば機動武闘伝Gガンダムという作品があって、随分当初は嫌われていた。
ガンダムといえばリアルな戦争描写、勧善懲悪に終わらぬ深い人間模様だ。
そういうシリーズの流れから脱却し、宇宙世紀という枠組みからすら出た。
そうして描かれた「ガンダムでタイマン格闘技」という路線を貫いた。
結果、Gガンダムは新たなアナザーガンダムの時代の扉を開いたと思う。
GがなければWやXは勿論、ターンエーやSEED、00だってなかったかもしれない。
俺が子供の頃はまだ、ガンダムには「よかれ」と思う挑戦が刻まれていた。


だが、ガンダムというブランドが肥大化して一人歩きを始めてしまう。
商業的価値が高いコンテンツとして、その枠組みだけが用いられる時代。
ガンダム(特に1st)の魅力を分析し、好まれた要素だけを抽出する作業。
それは悪いことではない、商売とはそうで、売るとはそういうことだ。
結果、「ガンダムティスト」を多分に含んだガンダムが多く作られる。
名場面や感動のシチュエーションは再生産され、再消費されてゆくのだ。
この連鎖を残念ながら、俺には止める術はない…苦々しくは思っている。
だが、そういうことをしてまで、ガンダムブランドを守る人達もいるのだ。
いつかまた、ガンダムが新たな挑戦に挑む時代まで、ガンダムを守る…
深みもなく上辺だけをつくろった作品でも、存在感を訴えてゆくんだ。


ガンダムにおけるお約束というのは、先達が練り出した芸術品だと思う。
強化人間の悲劇や、口論しながらの戦闘、ロボットプロレスを抜け出た殺陣。
ガンダムは常にお約束のリフレインをしながら、新しい要素を取り込む。
でも、お約束というのは便利で、「なぜそうか」がなくても通用する。
視聴者と制作側が「これはウケる」という認識を共有するガジェットだから。
俺自身、仕事柄お約束というものを常々意識しているし、世話にもなってる。
俺のような者はこういう話題に発言するべきではないとさえ思える位に。
ただ、お約束をみんなが共有する感動に高めたのは、最初にやった人達の力。
そのことを忘れないで欲しい…そして、上辺だけのお約束に疑問を持って。
どこかでみたような、なんだか前にも感じたような…その気持ち、大事に。
同時に、新しい感動に始めて会う瞬間を慈しみ、それがお約束に昇華するのを…
どうか許して欲しい、作り手達の苦しく身を捩るような想いを許して欲しい。
創作者は作品が全て、作品で良し悪しの評価を受けて消費者に裁かれる。
そのことで甘える気持ちはないし、金を払う者には楽しみ評価する権利がある。
でも、自分は消費者としては、評価するためだけに時間とお金は使いたくない。
接するからには楽しみたいし、素直に感動は受け入れていきたいと思うのだ。


毎度日記が長いなあ、AGEですねAGE…うーん、試みはよかったと思うんだ。
ちゃんと物語として完結しており、製作サイドの仕事として真摯だとも思う。
今回のガンダムは個人的にはイマイチだったけど、ちゃんとした仕事だった。
AGEは過去ガンダムのお約束を使うのが少し下手で、独自性も弱かったかな。
やはり、「親子三代百年の大河」という大きな要素を生かしきれなかった。
これ、絶対おもしろく料理できるって、もっと熱く物語を彩れるって!
そもそもガンダム自体が、現実で親子で楽しめるコンテンツなんだもの。
世代を超えてわかりあったり、世代の壁で衝突したり、そういうドラマ。
ガンダムだからこそできる、そういう深い百年戦争が見たかった気がする。
あとね、やっぱりガンダムガジェット(いわゆるお約束)が安易すぎるよ。
お約束って、一種の面白い要素のツールだけど、使い方は工夫して欲しいよ。
ポンとはめ込めば、カチッとはまる、でもそれだけじゃ面白くはないよね。
例えば四期ED、歌に合わせて壊れた歴代ガンダムが並ぶシーンがあるよね?
ダメージドMSによる悲哀の表現、これはガンダムSEEDで始めて一般化した。
ガンダム00でも積極的にEDで使われたし、新しいお約束として定着したね。
でも、それをポンとやってもどうかな…そういう些細なことさえ俺は見てる。
ガンダム00では、「自然に埋もれて朽ちるガンダム」というメッセージがあった。
お約束を使う時は工夫を忘れないこと…自分にも言い聞かせて戒めたいね。