生きることは悲しいかい?信じる言葉はないかい?

魔導大戦中期、二騎の美しいMHが星団中の話題をさらう。
片方は勿論、若きデプレ皇子の駆るエンプレス・フレーム。
炎の女皇帝を象った、母親の形見で皇子は戦う…国土奪還のために。
四散したハスハの民は、引き裂かれた母国に希望を見出すだろう。
多くの栄えある騎士達に支えられ、輝かしい戦果のエンプレス。
だが、もう一騎は違う…幾度も敗北し擱座して損傷する。
何度も戦場より無様に這い出て、応急処置もそこそこに復帰する。
フィルモアハイランダーが駆るネプチューンは常に勇ましくも痛ましい。
ヘッドライナーの少女もまた、骨が折れ肉が削げ落ちようと戦い続ける。
自分を生かしてくれた国民のため、自分に生きる意味をくれた皇帝のため…
そんな彼女の戦いは決して褒められることはなく、讃えられもしない。
自ら罪の十字架を背負って、それでも彼女は、クリスティン=ビィは戦う。
明暗の別れた二騎のMH、二人の騎士を星団は永く記憶してゆくだろう。


FSSでは好きなキャラクターが沢山いて、一人に絞るのは難しいです。
アイシャやアルルも好きだし、ヨーンやランド、ヴュラードも大好き。
そんな中でもやっぱり、クリスティンは別格というか、感情移入してしまう。
あの娘には救いもなく、恋も青春もない…豊かさや穏やかさとは無縁だ。
若くして罪を犯し、その償いとして心身を帝国に捧げて戦う宿命を背負った。
剣とMHと戦争の知識しか知らず、戦うマシンとして蔑まれ虐げられる。
叶わぬ恋を支えに戦い、それを承知で身を粉にして獅子奮迅の活躍を遂げる。
いつしか帝国のエース、そして筆頭騎士になった彼女のスマイルは清冽だ。
いいキャラだと思う、魔導大戦の血と硝煙だけが彼女を大人の女にした。
そしてもう、無垢で純真だった少女の面影はどこにもないのだ。
彼女は皇帝が殺せと言えば、赤子とて容赦なく殺してゆくだろう。
彼女は皇帝が焼き払えと命じれば、町や村も躊躇なく焼き払うだろう。
そこに狂信や盲信はない…自らが選んだ宿業、業苦極まる受難の道なのだ。
クリスは自ら進んで帝国と皇帝に尽くし、帝国と皇帝にその身を捧げて戦う。
それこそがシバレースの十字架を背負った彼女の、唯一生きる道なのだ。


俺もそんなふうに生きよう。
独り戦い、戦い抜いて、戦い終えて、果てる。
勿論クリスにも俺にも、沢山の仲間や応援、援護があるけども。
そういう人達の温かな和があるからこそ、孤独な戦いを続けられるのだ。
戦う時は常に独りさ、そして敵は決して容赦などしてくれない。
厳しい弱肉強食の生存競争を、死ぬまで生き抜くしかない。
もはやそうすることでしか生きられないのだとわかっているのだ。
既に退路はない、ならば倒れる時は前のめり、それまで常に前向きにだ。
ついでに、中高生男子読者の多数を前屈みにできれば嬉しいですね。