I'm in Love

遅い青森の春に、りんごの花が咲いている。
まだまだ風は冷たく、身を切るようだ。
遠く、冠雪の津軽富士が見える。
少女はおろしたてのセーラー服で汽車を待つ。
藤崎の地主の家に生まれた、良家のお嬢様だ。
昭和初期、青森でも珍しい女学院に通っている。
髪を三つ編みに結って、文庫本を片手に通学する。
一時間に一本の汽車を、そうして毎日待つのだ。


晩年の祖母が語ってくれた、祖母の原風景です。
多分、今はそこにいるんじゃないかと思うんだけどね。
何度も繰り返し語った、少女の頃に戻れたらいいよね。
昭和という時代に僕等を抱えて走った、走り抜いた、走り切った。
あの父が祖母に「お疲れ様」と声をかけた、それが全てだと思うのだわ。