花は咲く

あの未曾有の大震災から、今日で二年を迎えました。
まだ二年なのか、もう二年なのか…その意味を捉える意義は重いです。
報道は声高に復興の遅れを叫び、現実に避難の苦しみに耐える人は数多。
それでも、俺はこんな時だからこそ思いたい…皆、ベストを尽くしてると。
後の歴史にこの時代がどう刻まれるか、それは今はわかりません。
ただ、あらゆる人間が復興のために努力をしていると思いたいです。
その一助になるため、自分にはなにができるかを考えずにはいられません。
実際問題として、批判に値する現状と日常が被災地に広がっています。
でも、それでも、だからこそ…人の力を、日本人の力を信じたい。
あの終戦の焼け野原から立ち上がった力が、まだ俺等にあると思いたい。
思うだけではなく行動で示したいし、既に行動している人がいる。
鎮魂の祈りとともに今、再起と復興への願いを誓いたいと思います。
多くの犠牲から教訓を学び、未来への財産として記憶したい。
この震災を経て、次の天災での被害者を少しでも減らしたい…
そういう想いが今、この日本に満ちているんだと思います。


その男は走った、ずっと走っていた。
39年間、休まず走り続けていた。
追い続けていたのである。
昭和一桁生まれ、頑固な日本気質の難物である。
いつも誰かと衝突し、いつでも誰とでも衝突を恐れなかった。
彼には追い続けるものが、一生を賭す価値が目の前にあった。
その男はずっと、ずっとずっと走り続けていたのだ。
そして今、ようやくその背中をつかまえ、走り終えた。
ようやく掴んだその腕の持ち主は、新緑色の上着を翻し振り返る。
「遅かったなあ、とっつあん!」
稀代の怪盗、栄えある大泥棒の三代目が笑顔を零す。
その細い手首を掴んで、しかし手錠を握る前に男は微笑んだ。
「もう逃がさんぞ、ルパン。一緒に来てもらおうか」
そうして二人は、半生記近くに及んだ追走劇を終えた。
喝采もなく、カーテンコールもない喜劇の幕を下ろした。
手錠はいらない、掴んだ手と手が全てだったのだと思う。
そうして今、二人は共に同じ場所で結末を迎えたと確信している。


名優がまた一人、この世を去った…悲しみに今、俺は泣いている。
今月はもう、二人もの名優が俺の前から去った…その全てが惜しい。
納谷悟朗さん、逝く…嗚呼、ユパ様が…腐海一の剣士が召された。
ユパ・ミラルダとは、風の谷のナウシカに登場するナウシカの師匠だ。
剣豪にして賢者、世界の真理を求めて旅する求道者でもあった。
アニメ映画でも漫画版でも、思慮深く慈愛に満ちた懐の深いキャラだった。
その人柄は多くの娯楽作品、アニメや漫画、ゲームに影響を与えた。
俺の大好きなFFTの雷神シドなどは、その面影が色濃いと思う。
漫画版ナウシカの終盤、友愛といたわりを説くユパは逝ってしまう。
テロリズムを否定し、それを行使する人を許して諭し、命を落とす。
そのキャラクターに命を吹き込み、息吹を込めて声を当てた方も逝った。
こんなに悲しいことはない、納谷悟朗さんの作品で育った俺だから。
多くのロボットアニメでラスボスの声を当て、その威厳を作った氏。
英伝では、大好きなメルカッツ提督を演じた氏…義勇の将だった。
今月は訃報が続く、本多知恵子さんの死もショックだった。
大好きなロボットアニメ、重戦機エルガイムのヒロインを演じた方だ。
俺はレッシィの方が好きだったが、アムの天真爛漫な姿も好きだった。
快活で闊達、一途にダバを想い、その気持ちを行動にする少女…
ファンネリア=アムは、ダバがエルガイムを託した女性だった。
白亜に輝く宝石のようなエルガイムを、彼女はダバのために守った。
そして、最後には再び信じた男へエルガイムを託した…いい女だなあ。
ヘッドライナーとしての腕もそうだが、その一貫した気風に惚れた。
他にもZZガンダムのプル&プルツーなどは、俺の世代では忘れられない。
誰もが皆、彼女が命を灯したキャラクターに恋をした世代なんだ。
心からご冥福をお祈りすると共に、その安らかな眠りを願います。
お二人が演じたキャラはこれからも、俺の中で生き続けます。


花は咲く、咲くんだよ…嵐や日照りを乗り越え、絶対に咲く。
誰もが皆、生きているだけで種子を振りまいているから。
それは本人が思いもよらぬところで芽吹き、やがて花咲く。
その花はやがて、愛でる人々の心に感動を刻んで枯れるだろう。
そうして実を結んで、やがてまた再び種を大地に産み落とす。
そのサイクルを世界は、命は繰り返してきたんだと思う。
被災地に生きる人、復興に励む人、原発の仕事に勤しむ人…
誰もが皆、今この瞬間に咲いている命…声優さんだってそう。
その全てが、咲き誇る大輪の花なんだと俺は思うんだ。