ガルパン上映会

ガールズ&パンツァー、通称ガルパンなるアニメが面白いと聞く。
なるほど都会では、帝都ではハイカラなアニメが流行っている様子。
なんでも美少女たちがWW2の戦車で競い合う「戦車道」のアニメとか。
しかし青森はアニメ不毛地帯、世間の娯楽から切り離されたガラパゴス
そこではサブウェイやスターバックスに行列を作るというデカルチャー
だがっ、我々オタクは厳しい北国の環境に決して屈したりはしない!

そんな訳で、今日はガルパン上映会をしてみんなでアニメみました。
我が家に友人を多数招き、酒を飲み交わしてガルパンを鑑賞。
是非ガルパン関連の消費に貢献したく、写真の日本酒を数本購入…
すまぬ友よ、ながやんにはこれが精一杯…これで許して欲しい。
や、普通に美味かったぜ、撃破率120%な大洗町の日本酒!
今日はとても楽しい時間を過ごした、全12話を一気見である。
こんな馬鹿な企画に参加してくれた友人達に感謝を…ありがとう。
楽しいアニメを紹介してくれた友人にも、ありがとう。
とても楽しい作品で、戦車好きとしてもとても楽しめた。
感じたことをメモしておきたいが、少し冗長になるみたいだ…
なので、ここより下は暇な人だけ眺める程度に見て欲しい(笑)


1.温故知新でパンツァー・フォー!
2.史上最大の戦車 〜 VSマウス戦に見るリアルとファンタジー
3.諸君、私はまほたんが好きだ
4.再録! ポルシェティーガーという時代の徒花


この四本でお送りします!


1.温故知新でパンツァー・フォー!


主人公の西住みほは、内気で引っ込み思案などこにでもいる女の子。
だが、彼女は名門野球一家に生まれたエリート投手だったのだ。
しかし、以前いた高校で、自らの判断でチームを敗北させてしまう。
そのショックから逃げるように、彼女は野球部のない学校へと転校…
そこでみほを待っていたのは、素人だけで甲子園を目指す試練だった!
そして明らかになる真実…甲子園で優勝しなければ学校は廃校に!
今、母校を愛する少女達がズブの素人から野球に命を燃やすのだった。


…というあらすじの「野球」を「戦車道」にしたのがガルパンです。
こうして書くと、そのストーリーは古き良き王道スポ根ですよね。
自分は一応、ガルパンのテーマは「イキイキ戦車戦ひゃっほい!」かなと。
で、それをエンタメとして成立させるため、萌え萌えな美少女を盛り込む。
そしてストーリー自体は奇をてらわず、誰もが納得の古典で勝負!と。
こう書くと安易に見えるかもしれませんが、とても大事なことです。
王道というのは、古くから愛されてきた「型」なんですね。
武道はもちろん、書道や華道、茶道にも型的なもの、ありますよね。
様式美とも言いますが、これを有効活用することはとてもいいことです。
なにせ偉大な先達達の「これいいよ、使ってみ」ってお墨付きですから。
なにより大事なのは、王道やお約束が持つ安心感は常に求められます。
それは実は、後述の「斬新さ」とよく相反するとみられる魅力です。
ですが本当は、斬新さと王道は、俺は両立するものだと思うんですね。
ガルパンは、ベタベタのスポ根展開を「戦車でやる」という新しい試み…
安易に美少女と戦車をよそっただけと見るのは、実は簡単です。
でも、それを作品として昇華してる、娯楽として成立させてる…
そこには、細部に拘り抜いた制作側の努力があるような気がしました。
「型」を知り、それを使えて初めて「型破り」へと進めるのです。
常識を知らなければきっと、常識外れなことも意味をなさないでしょう。
「型」から出る、それを「姿」と言う…古典芸能の言葉ですね。
そうしたことを再認識させてくれた、とてもいい作品だと思いました!


2.史上最大の戦車 〜 VSマウス戦に見るリアルとファンタジー


昔からスポーツカーが好きで、某公道峠バトル漫画の愛読者だった。
サラリーマン時代は、毎週その漫画を読むのが通勤の楽しみだったのだ。
だが、ある日ながやんはその漫画から感じる魅力を失ってしまう。
今でも素晴らしい作品だと思うし、RX-7GT-Rヒルクライムは名勝負。
でも俺は、勝敗を決する要素の一つが「車が空を飛んだ!」で…萎えた。
今までリアルな公道レースでの駆け引き、技量を競ってきた作品である。
それが、敵が車を飛ばせた、主人公も続けて飛んだ、マリオカートか!
実際には、ダウンヒルのヘアピンで、崖から車が飛び降りる感じだが。
その瞬間、今までのめり込んでいた熱が覚めてしまった…そういう話。


創作物である娯楽作品には、ある程度のファンタジーが当然とされる。
だが、扱う題材如何では、「リアリティ」が作品の面白みに直結する。
このリアリティなるフレーバー、果たしていかなるものだろうか?
例えば前述の俺の例だが、現実ではスポーツカーは空を飛ばない。
時速数十キロからブレーキングした車が崖を飛び降りるとどうなるか。
試すまでもない、一発でマトモに走れなくなる…自明の理であろう。
WRC世界ラリー選手権)でさえ、専用車両がジャンプでクラッシュする。
まして市販車でやればどうなるか、無事ではすまされないのである。
だが、それをやってのける主人公を「すげぇ!」と思える人もいよう。
そこまで熱中させたら、のめり込ませたら、それは「リアル」なのだ。
リアリティとは、作品の嘘を信じられる、そんな雰囲気をもたせること。
だと、俺は、思う、けどね…異論もあると思う、色々あってもいい。


さて、ガルパンは佳境で、まさかの超重戦車マウスが登場する。
総重量約200トン、WW2時代の戦車の主砲では撃破不能という移動要塞だ。
この難物が、主人公達の貧弱な戦車部隊の前にズドンと現れる。
当然苦戦、というか勝負にならない…あらゆる攻撃が弾かれる。
しかし作劇上、主人公は現有戦力でこれを撃破する必要がある!
それも、今まで一生懸命作ってきた、作品の世界観を壊さずに。
ビーム兵器があったら一発だし、主人公が10式戦車だったら楽だろう。
だが、そうではないし、そういう当たり前ではドラマとして成立しない。
そこで主人公が閃きを得て奇策で…となるのだが、そこがまた難しい。
あまりにもファンタジーだと、見てる側が覚めてしまうからだ。
難しいだろ…でも、ミリオタって結構拘るクラスタだしさ(笑)
一生懸命重箱の隅をつつく、その楽しみもまたあるから悪くも言えない。
で、主人公はなんと、味方戦車をマウスの正面へ…腹に潜り込ませる。
接地面が減って空転、立ち往生するマウスへ、さらに軽戦車を!乗せる!
腹に潜り込んで持ち上げてる(踏まれてる)戦車をジャンプ台に、乗る!
こうして旋回砲塔を封じた上で、エンジン部へ高台から砲撃、無力化する。
…これを「ファンタジー」と見るか、「リアル」と見るか。
それよりも大事なことをしかし、忘れてはいけない。
燃えるか、楽しめるか…今まで得てきた熱は冷めないか。
いい作品はいつでも、しれっとリアリティのある嘘をつく。
それは、作品や作風、世界観を守り、見るものを楽しませるためだ。
だからね、200トンのマウスの下にヘッツァーが潜ったら、とか…
そんなこと考えてはいかんのよ、ってか考えること忘れさせられたら勝ち。
いつだって娯楽は、楽しんだ者が一番健全だし、得をするのだと思うよ。


3.諸君、私はまほたんが好きだ


全12話を見終えて、自分が一番好きなヒロインは西住まほ隊長だ。
秋山ちゃんもかわいい、ああいう後輩や同級生がいたら最高だよね。
でも、俺が一番感情移入してしまったのは、まほ隊長…お姉ちゃんだ。
西住まほはラスボスとして主人公の前に立ちはだかり、一騎打ちで敗れる。
だが、彼女を無能な指揮官だと言うことは、この俺が許さない!(キリッ
なぜなら、彼女は王虎…誇り高きティーガーなのだから。
ここでは、彼女がいかに魅力的なヒロインかを力説したい。


前年度の優勝こそ逃したが、西住まほ率いる学園は強豪校、王者である。
過去に大会を連覇しており、装備や人員等はトップレベルを誇る。
それに対して主人公達は装備も貧弱、なにより戦車数で圧倒的に劣る。
戦力差は20vs7…ドイツの重戦車20両を、雑多な7両で相手する主人公。
このアニメを見る若者には、俺は主人公の機転と勇気を見て欲しい。
それを支える仲間達、そして皆で共有する折れない心に注目して欲しい。
でも、俺はね…それを正面から受けて立つ、姉の姿に心が打たれた。
奇策の数々で質量共に優る姉達を翻弄する主人公、これは痛快だ。
その一方で、脆弱な少数にしてやられ続ける、それが西住まほだ。
滑稽に見えるかもしれない、しかし俺はあえて彼女を弁護したい。
彼女は王者、チャンピオン…あらゆる状況で王道意外を選べないのだ。
それは、彼女が由緒正しい戦車道の家元、その長女であることもある。
自分こそが西住流戦車道と、そういう生き方を自ら選んでいる故だ。
だから、どんな時でも彼女は後手に回る、常に主人公が主導権を握る。
それはラスボス、敵側だから当然に見えるだろうが、それでは50点だ。
俺は思う…実は「西住まほは相手の策を策と知りながら飛び込む」と。
これは王者の宿命だ…罠があれば食い破れと求められる猛虎の生き方だ。
否、そうあれかしと彼女は自らに課して、己を戦車道に捧げているのだ。
考えて欲しい、横綱が、世界チャンプが、頂点がなにを求められるか。
彼女には選択肢がなかったし、選択肢を選ばぬ覚悟を選び終えている。


クライマックス、起死回生の一打で主人公は姉との一騎打ちに挑む。
お互いフラッグ車、どちらかの擱座がイコール敗北という戦いだ。
数に劣る中、このタイマンに持ち込んだ主人公は凄い、格好いい。
だが、俺がしびれるのは…あえてそこから逃げようとしない西住まほだ。
なぜなら、彼女は猛虎ひしめくカンプグルッペの王なのだから。
そして同時に、「西住流戦車道」の看板を背負っているのだから。
最適解はあの局面、後続を待って時間を稼ぐ、これがベストだと思う。
十両を下らぬ戦車が、ポルシェティーガーを排除後に駆けつけるだろう。
それまで、火力で劣る主人公の四号戦車から、付かず離れず時間を稼ぐ。
だが、西住まほにはその選択肢は選べない…これは戦争ではないのだ。
これは正々堂々と互いを競わせる戦車道で、彼女はその体現者なのだ。
切ない…哀愁を感じるし、悲哀に胸が痛い…彼女は負けると確信した。
だが、他に道はないのだ…王者には退路や姑息などないのである。
彼女の負けは西住流の敗北、彼女の逡巡は戦車道への背徳なのだ。
挑まれたなら、いかな勝負でも受けるしかない…そして王は常に孤高。
主人公のみほが常に仲間達から声を貰う中、まほは一人で戦い続ける。
無論、彼女には同じ戦車の仲間、部隊の仲間がいる…だからこそだ。
自分が無様を見せれば、その汚名は仲間達にも泥を塗るのだ。
だからこそ、まんまと策にはまって、その中で戦うしかない。
王者は時として愚かしい…愚者であることからの逃亡も許されない。
全てにおいて優るがゆえに、たったひとつの正しさしか選べない。


最後のタイマンバトルは、身を切るような接戦、苛烈な死闘だった。
捨て身でなりふりかまわぬ主人公達と違い、余りにまほは不自由だ。
だが、西住まほは作中、一度も部下の失策を責めたりはしなかった。
そして、一度たりともその身を車内に下ろすことなく、外に立ち続けた。
砲火が飛び交い空気を切り裂く中、戦車長として堂々と振舞い続けた。
因みに主人公の西住みほは決戦時、一瞬ハッチの下に顔を引っ込めている。
それは、信頼にたる仲間達との絆があって、それが彼女の力だから。
だが、西住まほは微動だにせず、常に身を晒して戦車の目となった。
近代の戦車と違い、当時の車両にはカメラ等の装備が乏しい。
だから、車長は危険を承知で身を乗り出し、自らの肉眼を使うのだ。
故に車長はよく、大戦中は狙撃兵に狙われ大勢が命を落としている。
それでも、西住まほは砲塔の玉座から一度たりとも降りなかったのだ。
ながやんの戦車哲学では、車内に身を隠す車長は…既に負けている。
精神論に聞こえるかもしれないが、それぐらいの覚悟が必要なのだ。
でも、救いもあって、彼女は敗北を素直に受け入れ、妹を祝福している。
図らずも妹の戦車は?号、姉はティーガー(?号)であった。
鏡写しの戦車道を歩んだ姉妹の戦いは、機知に富むみほに軍配が上がった。
だが忘れないで欲しい、古くより「道」と称される武術、文化、芸能…
それらは全て、身をとして守らんと腹をククッた人間達が守ってきたのだ。
そしてそれを倒そうと足掻き藻掻いた者達が発展させてきたのだ。
道とは切り開く者が作り、続く者が踏み固めることで「道」となるのだ!


そんな訳で、「ながやんまたかよ…」だろうが、俺は西住まほ隊長が好き。
で、部員達を労い気丈に振る舞うも、擱座した自分のティーガーを前に…
思わず泣きそうになったりしてるといいなと妄想して楽しむのである。
で、涙を堪える隊長を、俺がそっと抱きしめてぺろぺろ(以下自主規制)
「あ、汗をかいたから!」と恥ずかしがるまほ隊長を(以下自主規制)


4.再録! ポルシェティーガーという時代の徒花


何度か同じ話をしてるので、耳タコな方もいると思う。
ポルシェティーガーという、本当に駄目な重戦車があるのだ。
ポルシェってあのポルシェだよ、ドイツのスーパーカーだよ。
ながやんはこの、ポルシェティーガーが好きなのだ。
とにかく実用に向かない、空冷エンジンも重い車体もまるで駄目!
ああもう、本当に駄目っ子だなあ…かわいいぜぺろぺろ。
まあ、エンジンを作ったのはポルシェなんですけどもね。
そのことでポルシェ社長は、戦後に戦犯として極刑になった。
息子は何度も父の減刑を嘆願したが、確か駄目だったと記憶してる。
息子が最後に父に会うと、後悔や懺悔とは別の言葉が飛び出す。


「息子よ、私はこんな車が作りたいんだ…車が、乗用車が」


それが今生の別れだったとか…息子は父の言葉を胸に刻む。
そしてついに、ポルシェは長い苦境の戦後を乗り切り、再出発。
息子は父の語ったあの車をとうとう作った…オープンカーだった。
息子は早速飛び乗ると、エンジンをかける…空冷の水平対向エンジンかな?
オープンカーは走りだす、分割された中で復興へ足掻く町並みを。
そして、森を超えて丘の向こうへと走ってゆく…軽快に、力強く。


「親父、見ているか! あんたの夢はここにある!」


流れてゆく景色が滲んでかすみ、どめどなく涙はあふれたという。
世界最強のスポーツカーを作る男達の、ポルシェのスタートだった。
ポルシェはレース界を席巻し、世界の名だたるスーパーカーになった。
不況時にトヨタ経営陣のテコ入れを受けても、手作りをやめなかった。
その一方で「カイゼン」を合言葉に、経営努力を惜しまなかった。
今でも、ポルシェは世界一の自動車メーカーだと俺は思っている。
それは、職人気質をよしとして愚直に生きるドイツそのものだ。
質実剛健、理論と合理を美徳とする精神こそが、ポルシェなのだ。
だからきっと、ポルシェティーガーは無駄じゃなかったと思いたい。
…思いたいけど、史実のポルシェティーガーは…弁護不能、かなあ。
その「重たい」って設定をガルパンは生かして、獅子奮迅の大活躍。
デカくて重い車体で決戦場への道を塞ぎ、並み居る戦車を迎え撃つ。
火を噴くアハトアハト、当時最強だったクルップ社製88ミリの咆哮。
うーん、素晴らしい…全部の戦車に見せ場が有って、とってもよかった!


5.おまけ 〜劇場版を大予想!


各学園艦の戦車部に、秘密裏に消臭がかかりエースが集められる。
戦車道のオールスターの中には、四号戦車と共に西住みほの姿があった。
集められた面々は再会を喜びつつ、驚愕の新事実を知らされる。
なんと陸地では今、封印されし古の発掘戦車が暴れているという。
その名は「ラーテ」…ドイツ語でクマネズミの意味である。
またの名を「陸上戦艦」と呼ばれる、歴史上最大の戦車だ。
それが今、ある者の手により暴れているという…だが、軍は出せない。
なぜなら、生活圏を洋上に切り離す程に、各国の関係は緊張状態なのだ。
ならばと戦車道の乙女達に下る密命…陸上戦艦ヲ撃破セヨ!


…ごめんなさい、大嘘です(笑)
因みにラーテってこんなの…ドイツは実に馬鹿だなあ(褒め言葉)
こいつに比べたらマウスなんかかわいいもんだ、大八車だよ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%86