ながやんがWRCを語るようです

俺は実は、子供の頃はあんまり車が好きではなかった…興味がなかった。
最初こそ道行く車に目を取られ、運転手さんになりたいと思った。
でも、いつしか車から飛行機、戦闘機…そしてロボットへ目が移った。
きっと、普段は目にできぬ、触れえぬ物のパイロットに憧れたんだと思う。
そんな俺に転機をくれたのは、日本でも有名な例の車漫画だった。
峠を攻めるハチロクに憧れ、闇夜を切り裂き走るZに痺れたのだ。
でも、俺はセブンやポルシェの方が、ライバルキャラが好きだったが。
専門学校生になった時、その漫画にのめり込んで車ファンになった。
自分の車なんて夢のまた夢だから、ゲームの中で我慢するしかなかった。
ソニーグランツーリスモを死ぬほど遊んで、オーナーな自分に思いを馳せた。
やがて就職してサラリーマンになると、マイカーの夢が現実味を帯びる。
一番欲しかったのはCR-XのEF-8、走りのSi-Rモデルがメチャクチャ欲しかった。
その当時で既に20年落ちだったから、手を伸ばせば買える値段だったね。
ただ、それを維持する生活基盤が持てず、でも中古雑誌を眺めては妄想した。
別に走り屋になりたかった訳じゃない、自分が想いを注ぐ物理的対象が欲しかった。
そんな俺も東京生活をドロップアウトし、田舎の青森に戻ってくる。
田舎では車は、生活の足であり日常の必需品だった…まあ、当たり前だね。
そして、今も乗ってる赤のフィットを買う、だが不思議と満足だった。
ライトウェイトなスポーツカーに憧れ、ファミリーカーに軟着陸だね。


そんな俺が若いころ夢中になったのが、WRC世界ラリー選手権だった。
正直、峠だ首都高だで違法運転を現実でやらかす人間はいけないと思う。
走りで何かを得たいなら、どうして手段を吟味しないのか…何でもそうだけど。
自分がやりたいことがあったら、それで飯を食うか、趣味として楽しむかだ。
自分に合わせたやりかたを選べばいいが、法に触れるなんて言語道断だと思う。
自分の好きなものが自分の不利益になったら、きっと悲しいと思うしね。
で、俺はWRCに夢中になった…F-1と違った魅力があって、その虜になった。
公道を走るあの車この車が、華麗にモディファイされて世界各地を走る。
荒れ地を踏破し、ワイディングにブレーキ痕を刻んでゆく…興奮と感動!
あくまで市販車をベースにした競技という点が、酷く俺を惹きつけたのだ。

さて、そんな若かりし頃の情熱が今、手の中で少しだけ再燃している。
これはディアゴスティーニの新刊についてきた、2003年のインプレッサだ。
このソニックブルーイカに彩られた鮮やかな車体を見て欲しい。
素晴らしい…格好いいね、インプレッサは日本でも数少ない「地上の戦闘機」だ。
単一目的の為に作られ、ドッグファイトの宿命を背負ったピュアスポーツだ。
かつて世界を震撼させた日本の翼の、その遺伝子を受け継ぐマシンなのだ。
ご存知スバルの前身は中島飛行機、数多くの大戦機を生み出した組織だ。
技術立国日本が初めて世界に挑んだ戦いの系譜が、この車にも感じられる。
水平対向四気筒、2リッターの排気量を誇るボクサーサウンドの咆哮…
腹に響くその雄叫びは官能的ですらある、日本が世界に誇れるスーパーカーだ。
俺の友人にも、インプレッサを愛車にしている人が何人もいてうらやましい。
このモンスターマシンは今も、日本のそこかしこで愛され走っているのだ。
日本の各車メーカーが挑んだWRCで、最も輝かしい栄光に恵まれた勝利者
俺はユハ・カンクネンがドライブするインプレッサが大好きだったな。
当時はまだ煙草の広告がOKで、インプレッサには555のペイントが鮮やかだった。
いつもピレリタイヤに泣かされていたけど、トヨタや三菱と共に世界を戦った。
そして世界的な不況と環境保全が叫ばれる中、静かに伝説へと消えていったのだ。
だが忘れてはいけない…こうしたWRCで戦った子達が、今の技術を支えている。
今、公道を走り生活を支えるあらゆる車が、WRCで生まれた技術でできている。
WRCは道楽なんかじゃない、本気で文明が自然と戦い、技術を育てた証なのだ。
その歴史の一端を知る者として、仕事場にインプレッサが飾れて嬉しいのだ。