地上最強のファミリーカー

カローラ2に乗って グラベルに出かけたら
あれよあれよという間に すんなり優勝♪
…とはいかなかったが、俺が断言しよう。
カローラWRCは俺が知る限り、地上最強のファミリーカーである。
競技用のWRカーだから、ファミリーカーじゃないけどね(笑)

トヨタは過去、70系スープラセリカWRCを戦ってきた。
そのトヨタが満を持して投入した最終兵器、それが…カローラだった。
最初、何かの悪い冗談だと思ったぜ?だって、カローラだぜ?
当時まだ若者だった俺から見ると、おっさん車だったからだ。
「プッ、カローラ…TTEオワタwwwww」って最初は思ったさ。
…最初だけは、ね。
俺たちの前に姿を表したのは、伝統のカストロールカラーをまとった戦闘機だった。
そう、まさしく地上の戦闘機たるWRカーの名に恥じぬ姿がそこにはあった。
最初、「おいおいこれのどこがカローラだよ!」と、我が目を疑った。
よーく見たらでも、目(ヘッドライト)が海外仕様のカローラAE110系だ。
うわー、本当にカローラでWRカー作っちまったよ、やってくれたな!
燃えたね…だって、カローラなのに2リッターで300馬力なんだぜ?
張り出たフェンダーに延長されたホイールベース、もう完全に別物。
セリカGT-Sのエンジンを搭載され、名手サインツのドライブでカッ飛ぶ!
カローラランエボインプレッサを追い回し、プジョーやフォードから逃げる。
痛快だったね、なんかこれだけでもう一本物語が書けるような気がした。

…だが、物語のようにはいかなかった。
これは世界のメーカーがしのぎを削る現実、そしてガチンコの競技だったから。
例えば新谷かおる先生の名作「ガッデム!」なら、カローラWRCは主役メカだろう。
しかし、当時すでにTTE(トヨタ・チーム・ヨーロッパ)には地力がなかった。
牙を持つ羊を繰り出してきたそのメーカーがもう、牙を抜かれた虎だったのだ。
勿論TTEは最大限の努力をしたし、最善を尽くした、それを俺は見てきた。
けど、悲しいかな企業は実績の出せない部署に投資をしたがらない。
日本のWRC三大メーカーの中で、トヨタは真っ先に白旗をあげて撤退した。
カローラWRCは熟成を重ねながらも、僅か3勝のみでワークスカーとして去る。


だが、ワークス撤退という事態がかえって、牙を持つ羊を野生へ解き放った。
カローラWRCを評価する多くのプライベーターたちが、この数奇な車を選んだのだ。
この奇妙な運命を生き抜いた、地上最強のファミリーカーは…最近まで走ってた。
そして多分、今も小さなアチコチの協議会やラリー大会で走ってると思うんだ。
余談だが、自分は競技車両のカラーリングはカストロールパターンが好きだ。
ホンダ系だと黒、トヨタ系だと白なんだよね、カストロールのこのパターン。