つらつらとつまらない話

RX-78-2、いわゆる初代ガンダムは「役者」である。
数あるロボットアニメの中で、初めて「演技をするロボ」になったのだ。
マジンガーZゲッターロボは、抽象化されたシンボルの意味合いが強い。
ボトムズダグラムでは、徹底して機械として描かれていた。
ガンダムだけが、リアルロボのリアリティと、スーパーロボのダイナミズムを…演じていた!
と、俺は思っているんだけど、これも一方的なものの見方だから、気にしないでくだしあ。
何故、俺たちは35年たった今でも、ガンダムの殺陣に、活劇に魅入るのだろうか。
1stガンダムのMS戦が、どうして様式美として後の作品に影響力を持っているのか。
やっぱり、ガンダムは「役者」だったんだなと俺は思うんだ、個人的に。
そういう話を前置きに、今日の本題に入って行きたいと思う。


今日の本題…MSZ-006-1、ようするにZガンダムは「アイドル」である。
Zガンダムが初めて、「偶像」としてのロボであり、なんでもこなす「アイドル」になった。
それは勿論、1stガンダムを模して作られた偶像という意味も、持ち合わせている。
同時に、当時の歌って踊ってドラマにも出る、アイドル的な初のロボットだったのだ。
何も、Zガンダムの汎用性、マルチロールなところをアイドル的と言ってる訳ではない。
アイドルって何か…それは、「夢を見せる概念」だと、俺は思っている。
そして、Zガンダムが生まれてきて、初めて「ガンダム」は「ガンダムシリーズ」になったのだ。
同時に、ニュータイプという人類の革新を、作中で具体的に表現したのもZガンダムだ。
Zガンダムは奇跡を起こす、いとも簡単に、安易に条理をねじ曲げてしまう。
カミーユニュータイプ能力を、具体的な現象として再現するのがZガンダムだ。
時には謎バリアーでビームを弾き、ビームサーベルが無限に伸びたりもする。
そういう、一種の破天荒さを許させてしまう、そういうところもアイドルなんだ。
同時に、周囲からの要求によって模られたZガンダムのデザイン自体が、アイドルだ。
バルキリーの様に変形して」「エルガイムMk2の様に大砲を持ち」「新しい顔を持つガンダム」…
スポンサーとプロデューサーの間で、何人のメカデザが七転八倒してきただろうか。
俺の表現が少し稚拙だろうけども、そういうとこも含めて、Zガンダムはアイドルなんだ。
そして、Zガンダムに魅せられた人間は、そうでない人間にはなかなか理解されない…
さらに、そういうガンダムをシリーズの中でたびたび産んでいく土壌を作ってしまった。
νガンダムに、フリーダムガンダムに、ユニコーンガンダムに、00ガンダムに…
なんだか凄いぜ、あいつが最強だぜ、唯一無二のガンダムだぜ!という価値観。
それを作ったのは、間違いなくZガンダムと、Zガンダムが駆け抜けた作品群だと思う。


Zガンダムって、そのデザインだけを見ても、本当に素晴らしいと俺は思う。
Zガンダムガンダム記号をちゃんと持ちつつ、差別化して、個性も持っている。
そういうガンダムは、後の世にエクシアユニコーンを待たなければいけないのだ。
そのずっと前にもう、NEXTガンダムという形をZガンダムは持って生まれたのだよ。
ただ、Zガンダムが産み落とされるまでの道のりは、決して平坦ではなかったけども。
俺がZガンダムで一番評価するのは、どにもかくにもあのフェイスラインである。
断言すると、ガンダムには「1st顔」と「Z顔」の二種類しか存在しないのである、今もって。
エクシアはZ顔亜種だし、ユニコーンのNT-Dモードは純然たる1st顔だよね。
本当に当時、Zガンダムは「新しいガンダムのスタイル」へと足掻いて藻掻いた、結実だった。
Zガンダムはアイドルだから、役者たる初代ガンダムみたいに上手に演じられない。
キャッチーな変形機構と大口径ビーム兵器で、わかりやすい強さしか見せられないのだ。
Zガンダムには演技力がなかったから、最後は文字通り体当たりで挑むしかなかった。
それでも、そういう無様さを「人の想いを強さに変えた」と、当時の富野御大は言い切った。
それはあたかも、アイドルが最後の引退コンサートをするような、盛り上げ方と散り方だった。
Zガンダムはでも、元祖アイドルガンダムとして、後進の道筋を作って、1stを絶対的にした。
Zガンダムが「やっぱり1stは凄かった」と「Zガンダムみたいになりたい!」を作ったんだね。


あ、さて…メカニックとしてのZガンダムを語る時、俺はセンチメンタリズムの信徒となる。
Zガンダムは、UC世紀における「ニュータイプのパワーを形にする器」となりえたのだ。
だから、シャアの反乱時、アムロが自分の愛機として欲したのは、Zガンダムだった。
それを連邦軍首脳部は危険と感じ、欠陥品で半端者のリガズィをあてがったのだ。
ジュドーもZZをメインに乗りつつ、要所要所でZガンダムに乗ったし、半分はそうだった。
プルを救った時も、砂漠で偵察に出た時も、ずっとジュドーZガンダムを選んでいたのだ。
Zガンダムは後に複数の派生機を生み出し、そのどれもが輝かしい戦果をあげた。
Zプラスリゼル、デルタガンダムとその兄弟たち…どれも名機たりえたのではないだろうか。
1stガンダムが生み出した伝説を、Zガンダムが神話の領域へと昇華させたのだ…は、言い過ぎ。
だけど、Zガンダムは本当に大変なデザインだった、メカデザさんは超苦労したんだよ。
当時はバルキリーショックというのがあって「主役機は飛行機に変形しなきゃ!」と思われてた。
ビルバインエルガイムMk2、そしてZガンダム…いわゆる主役後継機はみんな変形する。
マクロスバルキリーが模型業界、おもちゃ業界に与えたコンプレックス、そしてトラウマ!
この波に揉まれつつ、本当に多くの人が尽力して、Zガンダムを生み出したのだった。
Zガンダムはね…憧れであり夢なんだよ…求める人間にとって絶対なんだよ。
だから、その反作用で、求めていない人間にはどうしても滑稽に映ってしまう。
それでも、Zガンダムよ…今後も永遠なれ、刻を超えて光を放て。
お前は、お前こそが、今のガンダムブランドを作った翼なのだから。


今日、大病で隔離病棟に入院してる友人のために、RGのZガンダムを買った。
彼はZガンダムが大好きだから、喜んでもらえるといいなあ。