ガンプラで97式【氷蓮】を作ろう - 完結編 -


97式【氷蓮】は、拙作『リレイヤーズ・エイジ』に登場する架空兵器である。
西暦2098年、人類は謎の敵パラレイドによって滅亡の危機に瀕していた。
既に女子供といった非戦闘員も、戦場に送らねばならなくなっていたのだ。
そこで、短い訓練期間で習熟できる機動兵器が、パンツァー・モータロイドだ。
絶対元素Gxによる科学発展によって実現した、人型の陸戦兵器である。
【氷蓮】は、御巫重工が製造する最新鋭の次期主力量産型PMRであった。
本機は二度大破擱座するも、その都度修理され蘇った機体である。
幼馴染から引き継いで摺木統矢が搭乗し、パラレイドを殲滅してゆく。
従来機や旧型機のアッパーバージョンとして、装備刷新予定だったが…
開発生産の拠点もあった北海道に集中配備、データ収集も行われていた。
だが、実戦テストも兼ねた防衛戦で北海道は消滅してしまった。
そのため、ほぼ全てのノウハウを失った結果、生産中止になる。
89式【幻雷】より高出力、94式【星炎】より軽量で、運動性が高い。
生産中止後は、御巫重工がストックしていたパーツは陸軍が接収。
そのため、統矢の【氷蓮】は苦しい応急処置を強いられるのだった。

セカンド・リペアと呼ばれる本機の最大の特徴が、包帯状の補修材である。
これは、前回のファースト・リペアで使われた普通のスキンテープではない。
スキンテープは【氷蓮】が高出力で発熱する際、発火炎上してしまった。
そのため、耐火性の強い素材で作られているが、秘密はそれだけではない。
このオレンジ色のものは、スキンタービンと呼ばれる外部駆動機関である。
人類同盟の秘匿機関ウロボロスのPMR研究者、八十島彌助が開発したものだ。
スキンタービンは、機体の発熱を吸収し、そのエネルギーで動きを補佐する。
タービン、過給器の名の如く、外側から動きを助ける人工筋肉なのだ。
これにより、セカンド・リペアの運動性や加速力は大きく向上した。
最大で実に、ファースト・リペアの12%もの性能UPを実現したのだ。
それに伴い、機体色もダークブラウンからフレアパープルに変更された。
所々に見える赤う部分は、絶対元素Gx技術によるラジカルシリンダーである。
PMRは全て骨格となるフレームがあり、常温Gx炉を下腹部に搭載している。
その上から一次装甲を被せ、筋肉のようにラジカルシリンダーで覆う。
人間と同じで、全身に組まなくラジカルシリンダーが、指先まである。
この上から二次装甲、三次装甲を着せて、ようやく実戦配備となる。
ラスカの89式【幻雷】改型四号機のような機体は、例外であるとして…
通常、装甲の上からラジカルシリンダーが見えることはめったにない。
セカンド・リペアは換えの装甲が入手できないため、破損部が見えている。
そこから統矢の気迫をGx感応流素が拾って、赤く輝く発光することがある。



陸戦兵器であるPMRの最大の目的は、格闘戦によるパラレイド殲滅である。
これは、パラレイドが強力なビーム兵器を搭載していることに起因する。
ほぼ回避不能なビーム兵器は、航空戦力を無力化し、砲戦力学を覆した。
よって人類は、人型機動兵器での白兵戦に活路を見出したのである。
パラレイドが同士討ちを避ける距離、混戦状態に持ち込み、直接攻撃。
これが、西暦2098年の人類が用いる最も効率的なドクトリンであった。
各種PMRには、単分子結晶のナイフ等の武器が標準で装備されている。
現代の歩兵でもそうだが、いざとなったらスコップやピッケルで殴る。
40mmカービン等、銃砲も装備が充実しているが、決定打にはなり難い。
いざとなったら無手の格闘戦もする、それがPMRの基礎戦術なのだ。
そして、殴って蹴ってというわかりやすさが、操縦者の助けになる。
戦えと言われて女子供が思いつことを、そのままできる兵器なのだ。
セカンド・リペアは巨大な単分子結晶の大剣グラスヒールを持つ。
これは謎のPMR【シンデレラ】が装備していたものを勝手に使っている。
グラスヒールとは、その名の通りシンデレラの硝子の靴の意である。

グラスヒールは、巨大なマルチプラットフォームウェポンである。
その鍔には、二丁のビームハンドガンが標準で装備されている。
因みにこのサイズのビーム兵器は、現在の人類には製造不可能である。
同じ出力の物を作るなら、戦艦クラスの大きさの加速器が必要だろう。
一見してリボルバータイプに見えるが、シリンダーは粒子加速器である。
完全にブラックボックスで、現代の科学力では解明不能とされている。
しかし、人類同盟各国が運用するPMR用ハンドガンと共通規格である。
そのため、一時期は情報秘匿のため普通の30mmオートに換装されていた。


次元転移で突如現れ、謎の少女更紗れんふぁを連れてきたPMR…
その【シンデレラ】が装備していた大剣がグラスヒールである。
この大きさの単分子結晶は、現在の人類では精製不可能であった。
【シンデレラ】が現れた際に統矢が勝手に拝借、ずっと使用している。
その切れ味たるや、大きさからは想像もできぬ鋭利なものだった。
そして、セカンド・リペアに改修時、この大剣にも鞘が作られた。
以前、統矢がグラスヒールを落とし、格納庫を真っ二つにしたのだ。
この鞘だが、八十島彌助の開発した新たな力、追加武装でもある。
鞘自体にある能力があり、グラスヒールの力を何倍にも高める。
その真の姿は、連載中の『リレイヤーズ・エイジ - Zwei -』で!


【氷蓮】がファースト・リペアだった前作での、画期的な装備。
それが、対ビーム用クローク、要するにリアクティブアーマーだ。
皇立兵練予備校青森校区整備科の佐伯瑠璃が開発したものである。
パラレイドの優位性の基であるビームを防ぐ効果がある。
耐弾性は標準のアイオーン級を相手に、5〜7発程である。
被弾時に蒸発することで熱を吸収して逃し、打ち消すのだ。
だが、セラフ級のビームを浴びると、一撃で消え去ってしまう。
最悪、打ち消しきれずに本体ごと消し飛ばされてしまうだろう。
今は八十島彌助が改良を施し量産化、順次PMRの標準装備となる。