たまには愚痴りんぐ

パンドラの箱を開けた女、パンドラ…彼女の一番の罪は?
これは、新谷かおる先生の漫画『エリア88』の名場面です。
エリア88ってのは基地の名前で、しかも陥落してるんです。
で、逃げた司令官と副官が、最後に砂漠でこんな話をする。
傭兵達を「母国へ帰れ!」と送り出しつつ…期待して待つ。
傭兵達には「もしまだ戦うなら」と、一言言ってある。
果たして、金の払えぬ男に傭兵達は付き合ってくれるか…?
そんな中でのヒトコマ、パンドラの箱の話なんですね。
で「パンドラの一番の罪は、最後に希望を出したこと」だと。
あらゆる悪徳が出ただけなら、まだよかったという話。
希望なんかを最後に出すから、人間は諦められないのだ。
この話をする男が、希望を持ってる故の話なんですが。
希望という概念がなければ、諦めがついていいじゃないか。
今日はそんな、ダウナーまっしぐらなお話です。
因みにエリア88でどうなったかは、是非原作を!


ガンダムUCは凄い作品だと思うけど、少しモニョるんだ。
やっぱり、主人公のバナージにどうしても感情移入し難い。
逆に俺なんかは、リディが大好きで見てて悲しくなる。
勿論、作劇的に高レベルな作品だし、質は高いと思う。
戦闘シーンも濃密だし、マニアックなMSの活躍は最高だ。
でも、可能性というテーマに対して「神の手」を感じる。
製作者の意図というか、バナージびいきが鼻につくのだ。
バナージは悪いキャラじゃない、でもいい子過ぎてダメだ。
一族の宿命、血の呪いを受け、母子家庭で大変だったろうさ。
でも、劇中では常に勝者、そうでない時は周囲が優しい。
歴代主人公を殴ってきたブライトさんまで、優しいんだ。
なんか、イラッとする…挫折も敗北も、大したことない。
その上に、手厚く慰められて、励まされ、わかってもらえる。
リディなんか、そのアオリを食らって大変じゃねーかよ。
制作に「マリーダ殺さなきゃ」「誰が?」「リディでw」だぞ。
「リディでいっか」で、マリーダさん殺されちゃうんだぞ。
俺は今でも「可能性に殺されるぞ!」って彼の台詞、好きだ。
そういう彼とさえも和解してしまうとこ、バナージずるいよ。


俺の三十代は、挫折と敗北の繰り返しだったように思う。
二十代半ばで精神を病み、IT業界にはいられなくなった。
職を転々としたが「やれる仕事がない」ということがわかった。
誰だって、突然同僚が泣き出したりしたら困るだろう?
とにかく、うつ病にも色々あるけど、不治の病なんだ。
二度と治らない、治るなら死んでもいいって思える病気。
それがうつ病なんだとわかるまで、十年かかったと思う。
実際死んでみても失敗するし、本当に散々なことばかりだ。
でも、仕事と金以外には本当に恵まれててね、ありがたい。
俺が卑屈な劣等感をこじらせ、悪意ばかり発信してた時期。
そんな時も、近くで遠くでと、色んな友人が支えてくれた。
一度は商業作家になったけど、厳しい現実が待っていた。
唯一できるのではと思った仕事は、できなかったのだ。
担当さんの悪意なきいびりの言葉で、毎日ズタボロだった。
「SAOっぽく」「アレっぽく」「ただのいい話ですね」とね。
その人は俺を戦力外として切り捨てて、自分は仕事やめた。
担当さんの「あ、こいつ切ろう」は、話せばすぐわかるよ。
電話越しに、期待されてないことも何もかも伝わる。
…それでも、やっぱりまた商業作家に戻りたいと思う。
働いてお金を稼げないのは、とても惨めなことだからね。
辛いよ、この歳になって親のスネをかじるような生き方は。


希望や可能性に関しては、断言すると諦めてるけどね。
もう正直、戦い終えた、負け終えたと思ってる時もある。
今、余生なの…老後なのよ、だから毎日俺は楽しそうじゃん?
作家殺すにゃ刃物はいらぬ、ひたすら褒めずに否定でいい、と。
日頃はオブラートに包んで喋ってるけどね、色々あるしね。
ただ、今度もしまた商業創作をして仕事にする機会があれば…
「次は上手くやりたい」ですかね、マジンガーの映画みたいな。
まあ、今もう幸せだし、これ以上は戦えない気もするし。
半分世捨て人みたいなもんだし、今後もマターリとですよ。
俺だってたまにはグダりたい…性根は根暗で陰気だからさ。
あーあ、明日から四十路か…何も成長してない気がする(笑)
ぶっちゃけでも、全てが終わって余生だと思ったら、ですね。
ようやく「生きてるだけで丸儲け」って思えるようになった。
多くの人の厚意と善意で生かされてる、それが今は苦しくない。
昔はもう、死ぬ程苦しかったけどね、生きてるだけで。
少し小ざっぱりしたし、創作もはかどっていい塩梅だね。