日本死ねって俺だって思うよ(だが野党、テメーはダメだ!)

少し前、今年の頭あたりからだけど…長物家に引っ越しの話があった。
両親は盲人で、国家資格を持った鍼師として鍼治療院を営んでいる。
情けない話だけど、俺はそんな老いた両親に、実質養われているのだ。
毎日小説の執筆に専心していられるのも、両親のおかげという訳だ。
ほんとに情けない、この歳になって親のスネをかじって生きている。
TLを見れば、死にたいの惨めだの、俺はダメ人間だの言うけどさ…
勉学や仕事に励んでる、やるべきことをやってる人間は素晴らしいよ。
まして、苦しい死ぬとか言いながらも、働いてお金を稼いでる人がいる。
最高じゃん、立派な社会人じゃん…俺はもう、できる仕事がないんだ。
病気で、いわゆる社会に出て仕事をすることが不可能な人間なんだ。


ま、それはさておき…青森は不景気で、鍼治療院もかなりヤヴァい。
父は毎年学会で発表をしたり、鍼治療の腕を日々磨いて研究してる。
実際、花粉症とつわりを楽にする治療は、父だけの特許だと思ってる。
信じられないかもしれないけど、花粉症とつわりは鍼でよくなるんだ。
花粉症は、三日くらい通ってもらえれば、とっても楽になるんだよね。
でも、東洋医学の鍼治療は、世間では「おまじない」くらいの扱いだ。
医療として、科学的な医療処置としてみてもらえないのが悲しいんだ。
父が学会で発表しても、ハイハイワロスなの、とても悲しんだよね。
で、青森は不景気で、昔からのお得意さんも随分と減ってしまった。
父の腕は確かで、沢山の人が鍼治療に来る…そして、元気になる。
正月になると、患者さん達から酒が届く、それくらい慕われてる。
でも、客は年寄りばかりで、みんな徐々に減ってる…当たり前だ。
スポーツ医療の資格もあるから、部活動の学生や社会人も来る。
それでも、青森という土地自体がゆっくり死んでて、人が減ってる。
不景気でみんなの可処分所得が減ってるから、自営業はどこも厳しい。


そんな中、もっと鍼の腕を試してみたい父は一念発起、決意した。
鍼治療のメッカと言われる、大阪に治療院を移して腕で勝負したい。
当然、今の青森の家を売り払って、不利な中で再スタートになる。
勿論、俺も母も父をサポートする、俺だって何でもやる気構えだった。
俺はパソコンが少し上手い、コレを気にカルテを全部電子管理する。
身体が弱い母は今まで、治療院の経理と事務、カルテ管理をしてた。
でも、母を引退させて養生してもらって、俺と父で治療院をやる。
そう思ってた…大阪は古来より、鍼治療の盛んな土地柄なのである。
父の最後の大勝負、鍼師としての最後の戦いが始まると思ってた。


結論から言うと、ナシになった…白紙に戻った、引っ越ししない。
何故か?今、大阪で次々と鍼治療院が潰れている実態がある。
盲人、つまり視力を失った人間は鍼師になることが多いんだよ。
盲学校でも、鍼を教える学科があって、国家資格を取れるんだ。
父も母も、東京オリンピックの足音が聞こえる時代、勉強してた。
けど、次の東京オリンピックを大阪で迎える話は、立ち消えだ。
どうしてだと思う?俺は…なんていうか、不条理にも思えるんだ。
大阪では今、盲人の経営する個人の鍼治療院がバタバタ潰れてる。
健常者の整骨院が、『ついでに鍼治療』をやっているからだ。
それ自体はいい、免許を持ってれば誰でも開業できるからね。
悲しいけど自由経済の競争原理だから…でも、少し違うんだ。
鍼治療は保険適用可能な治療がある、つまり三割負担とかになる。
うちで1,000円の治療が、整骨院では300円になる…勝負できる?
この金額差、勝負になると思う?ならねーよ、バカ安いよ!
じゃあ、盲人達も保険適用して300円で鍼をすればいいのか?
…答は、無理…できない、何故なら保険点数管理ができないから。
今、医療のカルテは大半が電子カルテ、パソコン仕事になってる。
当たり前だけど、盲人は大多数がパソコンを使えない人間なんだ。
母は盲人用読み上げソフトで、メールを妹とやり取りする程度。
電子カルテのソフトなんか使えない、そもそも知識がない。
俺も仕事で電子カルテソフト作ったことあるけど、難しいの。
でも、視力を失った人に、サポートが不自由な中で、言えるか?
保険使いたかったら電子カルテ覚えろ、パソコン買えって言える?
金がないよ、それにパソコンの勉強は年寄りには難し過ぎるよ。


その点、整骨院は元から保険点数前提で商売をしているんだ。
だから、鍼の保険点数計算なんて、片手間でできるレベルなんだ。
大手はいいよな、医療事務員がいるとこだって少なくないから。
何故、障害者がようやく手につけた職を、奪われなければならん?
国民全員を守る健康保険が、どうして障害者から仕事を奪う?
俺は正直、悔しい…裕福な大手整骨院が、さらに儲かるんだ。
その影で、食うや食わずやの障害者が職を奪われているんだ。
それは合法だから、俺の怒りは全くもって見当違いかもしれない。
でも、鍼を科学的な医療として普及させたい父は、泣いている。
学会で相手にされず、腕で勝負も許されずに、泣いているんだ。